新居 猛  1920〜2007


 明治から続く剣道具を製造する家の三代目として生まれ、旧制中学卒業後家業に従事しますが、戦後GHQに剣道を禁止され、食べていくためにと職業補導所木工コースに通うことになります。修業後同窓生と家具つくりを開始、その後ガラス絵などでもその才能を発。1957年には「丈六寺三門額」というガラス絵の作品が特選一席を受賞。しかし当時日本各地で次々と紹介された北欧家具の素晴らしさに家具職としての彼の魂が触発されることになります。

「しかしどうして戦後の日本でこのような贅沢が出来ましょう。」

 座り心地を落とさずとことん安上がりに。組み立て椅子の製作へと彼のチャレンジは始まります。これこそニューヨーク近代美術館永久収蔵品に選定され、日本の椅子として海外へも強い影響を与えたと言う、あの名作[NYチェアX]誕生のきっかけです。「数少ない好事家のものではなく、親子丼やライスカレーのように多くの人が気軽に買え、役立ち、愛していただける椅子を作りたい。デザインの良し悪しは世間様が決めてくださる事。」と作者本人。


人間工学に基づきサイズ、傾斜角度,曲線を考慮した設計できわめて安楽性が高い。
わすか幅14cmに折りたため、約6.5kgと使う時だけ使いたい場所で手軽に使える。
四本脚と違い、畳摺りといわれるこの脚は畳や毛足の長いジュータンなどを痛めにくく、和室も洋室でも使える。(注:フローリングの床では何かを敷いて使用してください)
シートキャンバスの取替え(買い替え)が可能。
素晴らしいコストパホーマンス。ネジ四本の組み立て式でその小さな荷姿は、輸出も視野に入れたもので現在でもアメリカ・ヨーロッパ8ヵ国に輸出され、日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアで国際パテントを取得している。この現地組み立ての考え方はあのトーネットチェアに共通する。
シートは11色、アーム(木部)は2色、カラーが選べる。
座る人の体重かかかるとXの脚が左右に開きその力がキャンバスシートに程よい張りを与える。
製品の名付け親は日本のリビンググデザインに大きな貢献をされている武蔵野美術大学教授・島崎 信 先生であり、NY(ニー)は作者の姓とデンマーク語(フレッシュな)に由来する。
性能のための必要最低限のデザインであり、人間工学から生まれたパイプの曲線とアームの直線とXの脚、そのバランスはそのフォルムに完成度の高い美しさを与えている。
コピー商品に悩まされ訴訟を起こすが、「工業デザインの芸術性」が認められず敗訴。


NY chair X(1970 )
W620×D770×H840
ステンレス・ビーチウッド・コットンキャンバス
\24,150
NY chairX rocking(1972)
W620×D740×H920
ステンレス・ビーチウッド・コットンキャンバス
\25,200

 「真の芸術とは芸術家が我々真面目人生の加勢に文芸、学術、美術、音楽などを通じ、誰にでも納得して役立ててもらいたく、苦心からなる創造物であり、まことに尊い文化活動である。」と彼は言います。
 発表されて30年、コピー商品は見事に淘汰され、本物だけは今も逸品として売り続けられています。最後に当時裁判官から出された「工業製品と思われる椅子が著作権の対象になる根拠は何か?」との質問に作者はこう答えています。

「真に秀でるデザインは、数少ない好事家などを対象にするものではなく、世の中の多くの人々に役立つ自転車のようなもので、ファッションではなく地道な寿命を保つものでなければならず、その形態はあたかも地球の生物のごとく、うちに自然淘汰に絶える十分な内容を蓄え、外の何の衒いも無駄もないスマートなフォルムは、自ずと絶妙の機能美を醸するもので、それは必ずや花鳥風月を愛でるのに通じ、天の摂理でもある。」

目的と体格が合った人がその椅子に座ると、とても美しく見えるものです。「椅子は人が座ってデザインが完成する。」とはこうゆう事かもしれませんね!

SIMPLE&WARM
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